あなたは、こんな経験ありませんか。
「一度にそんなに教えられてもわからないよ」
「1回教えただけですぐやれなんて、できるわけない」
実は、こう思って当然なのかもしれません。
ベテランは、一日の流れが見えています。
でも、新人には目の前の作業しか見えていません。
ベテランが「線」で仕事を見ているとすれば、新人はまだ「点」で仕事をしています。
だから、一度にたくさん教えても、すぐに点と点がつながるとは限りません。
先日、果肉の検品作業で新人に教えている場面を見ました。
「こうやって果肉を割るんだよ」
「割ったら虫がいないか確認するんだよ」
「緑の異物はヘタだから取り除くんだよ」
「果肉を転がすときは、手前からすくうんだよ」
どれも、検品では大切なことです。
異物を見逃せば、クレームにつながることもあります。
だからこそ、教える側は一生懸命伝えます。
「見逃してほしくない」
「きちんと検品できるようになってほしい」
そんな思いがあるからこそ、気づいたことを伝えたくなるのだと思います。
でも、新人はただでさえ緊張しています。
慣れない作業をしながら、隣で見られ、次々と注意点を伝えられる。
「果肉を割らなきゃ」
「虫を見なきゃ」
「ヘタを取らなきゃ」
「転がし方にも気をつけなきゃ」
言われたことを一生懸命やろうとするほど、頭の中には「やらなきゃ」が増えていきます。
気持ちに余裕がなくなれば、結果として異物の見逃しが増えてしまうかもしれません。
もし私が最初に教えるなら、
「穴が開いている果肉を見つけたら、割って中を確認する」
まずは、そこから始めます。
大切なのは、果肉を割ることではありません。
果肉に穴が開いていると、中に虫が入り込んでいる可能性があります。
だから、割って確かめるのです。
「そうです。穴があったら割って確認します。虫はいましたか?」
と確認します。
そして、なぜ割るのかをもう一度確認し、同じ作業を続けてもらいます。
すぐに次のことを教えるのではなく、まずはその「点」ができているかを見る。
穴を見逃さず、自分から果肉を割り、中を確認できている。
そう評価できたら、次の「点」を伝えていく。
作業は一つでも、一つ一つの工程に切り分けて教えることができます。
教育に、一つの正解だけがあるとは思いません。
一度に伝える方法が合う人もいるでしょう。
理解する速さも、一人ひとり違います。
だからこそ、教える側は新人の動きを見ることが大切なのだと思います。
新人は、最初から「線」で作業を見ることが難しいものです。
一つ一つの「点」を覚えていきます。
なぜ果肉を割るのか。
なぜ果肉を転がして、いろいろな面を見るのか。
なぜ異物を取り除くのか。
一つひとつの意味を理解し、自分から検品作業を進められるようになったとき。
新人自身の中で、点と点がつながります。
「あ、こういうことか」
そう気づいたとき、初めて「点」は「線」になるのではないでしょうか。
点と点を結ぶのは、教える側ではありません。
新人本人です。
教える側にできるのは、その人の動きを見ながら、今必要な「点」を一つずつ伝えていくこと。
そして、点と点がつながるまで支えることです。
あなたは、新人に一度にたくさんの「点」を渡していませんか。
今日、その人に必要な「点」は何でしょうか。
教える側が渡した、一つの「点」。
いつか新人自身の手で「線」につながっていく。
その瞬間を信じて、今日も一つの「点」を伝えていきたいと思います。


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