今日のひとこと #3「線」と「点」

今日のひとこと

あなたは、こんな経験ありませんか。

「一度にそんなに教えられてもわからないよ」
「1回教えただけですぐやれなんて、できるわけない」

実は、こう思って当然なのかもしれません。

ベテランは、一日の流れが見えています。
でも、新人には目の前の作業しか見えていません。
ベテランが「線」で仕事を見ているとすれば、新人はまだ「点」で仕事をしています。
だから、一度にたくさん教えても、すぐに点と点がつながるとは限りません。

先日、果肉の検品作業で新人に教えている場面を見ました。

「こうやって果肉を割るんだよ」
「割ったら虫がいないか確認するんだよ」
「緑の異物はヘタだから取り除くんだよ」
「果肉を転がすときは、手前からすくうんだよ」

どれも、検品では大切なことです。
異物を見逃せば、クレームにつながることもあります。
だからこそ、教える側は一生懸命伝えます。

「見逃してほしくない」
「きちんと検品できるようになってほしい」

そんな思いがあるからこそ、気づいたことを伝えたくなるのだと思います。
でも、新人はただでさえ緊張しています。
慣れない作業をしながら、隣で見られ、次々と注意点を伝えられる。

「果肉を割らなきゃ」
「虫を見なきゃ」
「ヘタを取らなきゃ」
「転がし方にも気をつけなきゃ」

言われたことを一生懸命やろうとするほど、頭の中には「やらなきゃ」が増えていきます。
気持ちに余裕がなくなれば、結果として異物の見逃しが増えてしまうかもしれません。

もし私が最初に教えるなら、

「穴が開いている果肉を見つけたら、割って中を確認する」

まずは、そこから始めます。
大切なのは、果肉を割ることではありません。
果肉に穴が開いていると、中に虫が入り込んでいる可能性があります。
だから、割って確かめるのです。

「そうです。穴があったら割って確認します。虫はいましたか?」
と確認します。
そして、なぜ割るのかをもう一度確認し、同じ作業を続けてもらいます。

すぐに次のことを教えるのではなく、まずはその「点」ができているかを見る。
穴を見逃さず、自分から果肉を割り、中を確認できている。
そう評価できたら、次の「点」を伝えていく。
作業は一つでも、一つ一つの工程に切り分けて教えることができます。

教育に、一つの正解だけがあるとは思いません。
一度に伝える方法が合う人もいるでしょう。
理解する速さも、一人ひとり違います。
だからこそ、教える側は新人の動きを見ることが大切なのだと思います。

新人は、最初から「線」で作業を見ることが難しいものです。
一つ一つの「点」を覚えていきます。

なぜ果肉を割るのか。
なぜ果肉を転がして、いろいろな面を見るのか。
なぜ異物を取り除くのか。

一つひとつの意味を理解し、自分から検品作業を進められるようになったとき。
新人自身の中で、点と点がつながります。

「あ、こういうことか」

そう気づいたとき、初めて「点」は「線」になるのではないでしょうか。
点と点を結ぶのは、教える側ではありません。
新人本人です。

教える側にできるのは、その人の動きを見ながら、今必要な「点」を一つずつ伝えていくこと。
そして、点と点がつながるまで支えることです。

あなたは、新人に一度にたくさんの「点」を渡していませんか。

今日、その人に必要な「点」は何でしょうか。

教える側が渡した、一つの「点」。

いつか新人自身の手で「線」につながっていく。

その瞬間を信じて、今日も一つの「点」を伝えていきたいと思います。

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